第4号アパート購入秘話 第3話
第4号アパートの決済の5日前、不動産会社から電話が入った。
不動産会社との電話
実は、第4号アパートの一室で、
過去に病死があったこと判明しました。
な、なんだって!?
いきなり『過去に病死があった』なんて言われても…。
決済直前だし、どうしろというのだ!?
たまたま物件周辺の業者とやり取りすることがあって、その際に知りました。
当社に販売した売主に確認したところ、病死の事実を認めました。
当社の前の所有者は、当社との売買時にはそのことを知らせてなかったので、我々も今まで気づきませんでした」
気づかなかっただと!?
それで済まされるのか!?
ちゃんと確認してくれよ。
それでもプロの不動産屋かい!?
だが、怒ったところで何も解決しない。
これからできることを考えよう。
病死はどのくらい前に起こったのですか?
5年ほど前に起こったそうです。
あくまで病死ですね。
事件性はありませんよね?
はい、事件ではございません。
病死で、1~2日後に発見されてます。
なるほど。
分かりました。
一度電話を切って考えさせて下さい。
もしかしたら売買契約を白紙にするかもしれませんし、お金での解決を相談するかもしれません。
電話を切ると、大きなため息が出た。
悩む。
本当に悩む。
病死なので、厳密には入居者へも告知義務はない。
そう考えると、まだ検討の余地はあると考えるべきか。
どうしようか。
この売買は見送ろうか。
だが、時間は待ってくれない。
決済が5日後に迫っている。
このまま売買を進めるかどうか、早く決めなければ。
悩んでいても仕方ない。
病死による影響について、調べてみよう。
物件の死亡事故物件が影響しそうなのは、賃貸時と売買時だ。
賃貸に関しては、この物件に限っては正直それほど影響ないだろう。
今回買う中古アパートは、地域最低の家賃帯。
例え病死があった部屋でも、家賃さえ安ければ入居希望者は必ず現れる。
安い家賃を求める入居者は、過去の病死はそこまで気にしないはず。
死亡などの様なデリケートなことに敏感なのは、家賃10万円以上の高所得者の人たちだ。
もし入居が決まりにくくても、賃貸経営への影響は軽微だろう。
このアパートは8部屋で、たとえ1室に問題を抱えていても全体への影響は限定的。
これが建物全体への影響だったら、リスク分散が効かないので致命的だった。
一方、売買時への影響は、避けられないだろう。
更地にして住居用として販売するのであれば、問題は軽微だろう。
病死はどの家庭にも普通に起こっていることだ。
それに、更地にしてしまえば病死した部屋自体がなくなる。
影響があるとしたら、中古のまま売買する時だろう。
病死と言えども、事故物件を避ける投資家は一定数いる。
万が一売却することになった際には影響はある。
まぁ、入居募集時や売買時には、さすがに事前に伝えるべきだ。
もし、知らせないと後から問題となる。
関係者にも迷惑をかけてしまう。
あと問題は、今後何年先まで告知を続けなければならないのか。
10年?20年?
決まりが無いのが現状だ。
答えが無いと言うのが、最も困る。
賃貸経営をしている以上、いつかは死亡事故に遭遇すると思っていた。
不動産投資歴5年でも、今まで死亡事故に巡り合う可能性はいくつもあった。
第1号アパートで、90歳のおばあさんが住んでいた。
第2号アパートで、70歳で寝たきりの人が住んでいた。
大家は、死亡事故にはいつかは巡り合うものだ。
死亡事故があった物件を経営することは、今後の良い経験になるはずだ。
それに、もう5年も前の事だ。
昨日今日に亡くなったなんて話ではない。
まぁ、さすがに決済直前のタイミングで訪れるのは驚いたが。
総合的に見れば、それでもこのアパートの条件はとても良い。
例え過去に病死事故の履歴があったとしてもだ。
引き返す必要はない!買おう!
ただ、販売業者には金銭的な解決を相談しよう。
では、いくらを解決金として要求しようか。
売買価格は3,200万円で、1部屋あたりは約400万円。
一部屋あたり家賃が3.5万円とれるところ、病死があった部屋は2万円に約40%ダウンと仮定。
そうすると、部屋の価格は、400万円から40%(約160万円)ほどダウンすると見積もれる。
とりあえず、解決金は200万円くらい要求しようか。
※価値低下の説明図
また、ネットで調べると、
『死亡事故があった部屋でも、その後に入居があればリセットされる』
とある。
不動産会社に、入居契約してもらおう。
家賃3万円で入居者になってもらおう。
ここまで手は尽くせば、金銭的には大丈夫だろう。
不動産会社に、解決金200万円+入居契約3万×3年を要求。
不動産会社も、契約白紙ではなく金銭での話し合いには前向きだった。
だが、最初に提示された条件は、俺の希望に遥かに届かない内容だった。
当初の金銭提示額
私の要求条件
・解決金200万円
・家賃3.5万円で3年入居
販売業者の提示条件
・解決金50万円
おいおい。
病死発覚をたった50万円って安すぎるだろ!?
最初に、不動産会社からの50万円という提示条件を聞いたときは、安すぎて倒れそうになった。
だが、相手は百戦錬磨の不動産業者。
こういう交渉は慣れているだろう。
交渉の基本は、『最初は高めを投げて、徐々に歩み寄る』だ。
ダメ元で高めの球を投げてきたのかもしれない。
焦らず、
諦めず、
交渉を続けよう。
その後、何度も何度も交渉しました。
双方、何度も電話をして、時間をかけて話し合いました。
ただ、双方とも交渉決裂など考えていません。
不動産会社は売りたいし、俺は買いたい。
したがって、いつかは着地することが確定している取引でした。
結局、販売業者とは次の条件で合意しました。
合意の金銭的条件
・解決金130万円
・家賃3万円で3年間入居
(家賃収入として計108万円分)
合計で238万円の金銭的解決。
俺としても、かなり満足な条件です。
条件合意の証拠として、覚書を結ぶことに。
ここで一つ気になる点が発生。
この病死の事は、決済前に銀行に言うべきか?
だが、もし言ったらどうなる?
融資審査も最初からやり直しになるのでは。
そんな面倒なことはしたくない。
なにか良い方法は無いか。
良いことを考えた!
解決金の交渉は今日合意した。
だが、この問題が発覚して交渉したのは『決済後』ということにしよう。
不動産会社との覚書の日付は、決済後としておこう。
そうすれば、銀行への報告はせず、販売業者とも今覚書を結べる。
これで無事に決済・引渡を迎えることができる。
決済・引渡の日、
俺は会社を休んで決済に立ちあうことにした。
朝10時、静岡銀行にて、販売業者、私、販売業者指定の司法書士、そして、銀行担当者が部屋に集合。
静岡銀行担当者は、淡々と決済の手続きを進めていく。
売主・買主からの資料を、丁寧に確認していく。
この時、ふと気になることがあった。
静岡銀行担当者は、俺のネットバンキングのリアルタイムの預金残高を確認すると言うのだ。わざわざ、俺のスマホの画面でリアルタイムの残高を確認した。
スルガ銀行は、ここまで入念な確認は無かった。
通帳のコピーなど、紙ベースでの確認だけだった。
決済・引渡の手続きは無事1時間ほどで終了。
これで、計4棟のアパートの大家になった。
大家になったが、これからが賃貸経営のスタートだ。
新しく管理会社となる不動産屋D社と、管理委託契約を結びに行こう!
第4号アパートを購入して…
おおよそ3年ぶりのアパート購入でした。
前回の第3号アパート購入で資金が尽きて、長い間新しい物件を買えませんでした。
しかし、買えない間も中古アパートはほぼ毎日サイトでチェックしていました。
前回購入時から3年の間、世間では中古アパート投資が人気となりました。
売り物件の利回りは徐々に下がってきていました。
3年前にはあった高利回りや好立地の物件は、もはや見かけなくなっていました。
そんな相場過熱した環境下でも、第4号アパートの総合点はかなり高いと思います。
『立地』『利回り』『担保力』は、かなり高い基準を満たしています。
なぜ、こんな条件で買えたのか。
それには、2つの理由があると思います。
それは、
『空室の多さ』
『未リフォーム状態』
です。
問題がある部屋は安く買える
第4号アパートは、販売時に8部屋中5部屋が空室でした。
実に、空室率は50%以上でした。
しかも、どの部屋もフォームされていませんでした。
5部屋のリフォーム代は、多額の出費が必要となりそうでした。
1室に至っては、虫が飛び交っていて廃墟同然でした。
これら5部屋を人が住める状態にするには、100万円では到底足りません。
さらに、5部屋もの空室がありました。
5部屋も空室だと、ローンを組むと毎月マイナス8~10万円ほどです。
買った直後から、毎月持ち出しの状態となるのです。
このアパートを見に来た不動産投資家はどう思うでしょうか?
空室の多さと、要リフォームであることにハードルを感じたのではないでしょうか?
特に、不動産投資の初心者ではまず買えません。
例え買おうと思っても、こんな中古アパートにはよほど高属性でなければ金融機関は融資しません。
また、5部屋もリフォームしてない場合、全体で費用がいくらかかるかの推測も難しいです。
100万円で済むのか、200万円かかるのか、同様のアパートを運営してなければ想像できません。
この様に、空室の多さと要リフォームであったことが、多くの投資家を躊躇させていたのです。
ただ、私は『空室が多くて要リフォーム』でも問題ないと思っていました。
例え廃墟の状態でも、リフォームすればキレイになると経験済みです。
買った瞬間、10万円程度の持ち出しになることも問題ありません。
既保有の3物件は、ほぼ満室が続いていて、毎月約50万円のキャッシュフローを稼いでいました。例え毎月10万円の持ち出しがあっても、耐える自信がありました。
この物件は、スペック自体は相当良い物件でした。
ただ、相当の経験者しか買えない状態で売りに出されていました。
私の前に9人も内見して、1人も購入を進めていなかったのが、ハードルの高さを物語っています。一見良さそうに見えて、実は買える投資家が非常に限られているアパートだったのです。
不動産会社も販売しながらも弱気だったはずです。
『空室の多さ』と『要リフォーム』で、買い手が現れるか不安だったでしょう。
だからこそ、私はプロの不動産業者相手に約500万円もの指値が通ったのです。
普通の物件だと、業者相手に13%もの差し値はまず通らないです。
『空室の多さ』と『要リフォーム』に立ち向かう貴重な投資家なのですから、強気の交渉が通ったのでした。
満室で販売すれば高値で売れた!?
ちなみに、不動産会社はこのアパートを、より高値で売る方法がありました。
それは、不動産会社自身で全部屋キレイにリフォームし、満室にしてから売りに出せば良かったのです。
私は、指値して約3200万円で買いました。(病死発覚前の価格)
その後、5部屋のフルリフォームは、約200万円かかりました。
つまり、購入とリフォームで計3400万円かかったことになります。
ただ不動産会社が、キレイにリフォームして満室にしていると、この地域なら利回り8%程度で売れます。
利回り8%だと約4000万円。
200万円かけてリフォームして満室にしていれば、私に売るよりも約600万円も高く売れたことでしょう。
※高値と安値の図
プロの不動産業者でもミスをする
経営状態の良い物件は、多くの投資家に好まれます。
部屋がキレイで満室であれば、多くの投資家が買いやすいです。
理想は、満室状態で買った瞬間は何もする必要が無い状態です。
今回の物件は、販売業者はリフォームして満室にして販売するのが、最も高く販売できたはずです。しかし、早く売って利益を得ようとしたのか、結果的に私に安売りをしてしまったと言えます。
完全に販売業者の販売作戦ミスでしょう。
今回の購入を通して、不動産会社と言えどもミスをすることを知りました。
例え不動産のプロでも、100%完璧などないのです。
賃貸経営の経験で困難を乗り越える
私は、これは再生物件のつもりで買いました。
廃墟のアパートを立て直して、賃貸経営できると思っていました。
『半分以上空室』『要リフォーム』のアパートなど、誰でも買おうとは思えないでしょう。特に、初心者にとってはハードルが高すぎです。
しかし、私は4年間のアパート経営でリフォームや客付けの経験を積んできていました。
また、3棟で毎月約50万円のキャッシュフローを稼ぐ仕組みを作っていました。
経験と実績のおかげで、再生物件でも買うことができました。
普通のサラリーマンが、ここまでレベルを高めるのは大変だと思います。
しかし、サラリーマンでも、本気で不動産投資を頑張っていたら私みたいに経営力が付くのです。
そして、不動産投資の経営力が付けば、安く売られている物件を買うことができます。
そうすれば、さらに大きな利益を得ることができるのです。
今回は、不動産会社の販売戦略ミスもありました。
我々サラリーマン不動産投資家がセミリタイアを目指すには、
・自身の力を付け、
・不動産会社のミスを見逃さないで、
・他の投資家ができない事をする、
ことが重要なのです。
(第4号アパート購入秘話 完)