第2号アパート購入秘話 第1話
第1号アパートの決済・引渡を終えた頃。
俺はすでに次の不動産を探し始めていた。
第1号アパートの購入後も手元に〇〇〇万円は残っている。
不動産投資に対する気持ちも最高潮に高まっている。
この気持ちは抑えられない。
次の中古一棟アパートが欲しくてたまらない。
最初の中古アパートを探していた時と、心構えが少し違っていた。
なぜか、どの中古一棟アパートも良く見えてしまうのだ。
『この中古一棟アパートは、利回り11%もある!』
(土地が30坪(99平方m)しか無いのに)
『この中古一棟アパートは、販売価格が土地値に近い!』
(駅から徒歩17分もあるのに)
完全に『不動産欲しい欲しい病』に侵されていました。
1棟目を買った直後の不動産投資家は、ほぼ全員この病気にかかる。
私も、例外なく『不動産欲しい欲しい病』にかかっていた。
この病は、一種の恋の病。
物件を見ればすぐに恋に落ちちゃう。
あぁ、青春時代を思い出す。
昔は女性と少し話しただけですぐに好きになっていた。
私の場合は、なぜかそこから全く進展しなかったが(涙)
そんな時、
いつもの様に物件を探していると、
ある中古アパートが目に留まった。
売りアパートの販売条件
中古一棟アパート
所在地 | 千葉県 |
---|---|
駅徒歩 | 7分以内 |
構造 | 軽量鉄骨造アパ-ト |
築年数 | 25年 |
販売価格 | 2,550万円 |
満室家賃 | 335万円 |
利回り | 13.1% |
積算価格 | 1,500万円 |
※積算は相続税路線価ベース
おぉ!
これは!
駅から徒歩7分以内の好立地!
13%以上の高利回り!
積算は1,500万円くらいだが、
実勢の土地値2,000万くらいとなかなかの担保価値は高い!
なかなか良い物件ではないか!
まずは、利益分析だ。
このころの俺は、不動産投資の利益を判断するために、エクセルで自作の収益シミュレーションを使っていた。
価格、年間家賃、融資金額、金利など約10項目に数字を入力すると、予想利益やローン返済額、さらに利回りや返済比率などが一目で分かるのだ。
会社で培ったエクセル技術がこんなところで役に立つとは。
世の中、分からないものだ。
なるほど。
なるほどね。
この中古アパート、スルガ銀行で金利4.5%で融資を受けたとしても、年間100万円のキャッシュフローが期待できる。
さすが利回り13%あると、強烈な利益を生み出す。
指値をすると、さらに利益は高まる。
それに、この中古アパートの周辺は生活環境が整っている。
病院、スーパー、コンビニなどが徒歩3分以内にある。
出口としても、住宅地として売れそう。
ただ、良いとこばかり見ていてはダメだ。
悪いところもしっかり認識しなければ。
では、この中古アパートのデメリットは何だ?
一番のデメリットは、最寄り駅が私鉄で小さいことだ。
ウィキペディアで調べると、1日の乗降者数が1万人。
微妙だ。微妙すぎる。
1日の乗降者数1万人は、決して多いとは言えない。
駅の利用者数は、その駅周辺の発展度を表す。
当然多い方が良いに決まっている。
一般的に、JRや大手私鉄は駅利用者数が多い。
一方、マイナーな私鉄や、都内から離れる駅ほど、利用者数は少なくなる。
正直、1日の乗降者数1万人は悩むレベルだ。
だが、4駅ほど隣には乗車人員数万人を誇る巨大なJRのターミナル駅がある。
実際の部屋探しでは、そのターミナル駅周辺で諦めた人が、ここに流れてくることが期待できるのでは。
もう一つデメリットがある。
まぁ、こちらの懸念は比較的小さいが。
この土地が接道しているのは私道だ。
私道と言っても、単一の他人が保有している。
複数人が持ってない分ややこしくは無いが、採掘などは許可がいる。
気になる点は、第1号アパートに比べて、『立地』『利回り』『担保力』の全てで劣る。
アレは、ターミナル駅徒歩10分、利回り15%、土地物件であると、全てが優秀だった。
まぁでも、第1号アパートと比べるのは酷だ。
第1号アパートの条件は、特別に良すぎるのだ。
比べること自体が間違っている。
総合的に見て、他に売りに出ている物件と比べて良い中古アパートだ。
今まさに売りに出されているなかでは、一番手だ。
うーん、どうしよう。
悩む。
ホント、悩む。
あの青春時代を思い出す。
(まぁ、大した思い出はできなかったが)
ただ、
この買いたい気持ちは、
誰にも止められない。
よし、決めた!
買おう!
駅7分以内、利回り13%、担保力悪くない。
今見ている物件では、最も良い条件だ。
買って悩む条件では無いはずだ。
これだけ見比べての結論だ。
これでダメなら、他ではもっとだめだ。
むしろ、ここで悩んでいる時間は機会損失だ。
買うと決めてからは動きは早い。
第1号アパートを購入をしたばかりで、何をすれば良いか迷いはない。
仲介業者とのやり取りも、不安などは一切ない。
さっそく、仲介業者に電話だ。
不動産会社との電話
第2号アパートについてお電話しました。
このアパートはまだ残っていますか?
まだありますよ
いくつか質問がありますがよろしいでしょうか?
まず、御社は元付業者ですか?客付業者ですか?
元付です。
元付業者と客付業者の違い
・売主と直接連絡を取っているので交渉しやすい。
・売主買主の両方から手数料を得るために、早めに売買成立させたい。
・売主とは距離が遠いため、交渉も通りにくく情報も乏しい。
この仲介業者は元付か。
なら、両方から手数料をえるためにも、早めに売買取引成立させたいだろうな。
交渉や指値を積極的に行えるかもしれない。
売主は、なぜこの中古アパートを売却するのですか?
資産の整理です。
売主の旦那さんがアパートを管理していましたが、最近亡くなられました。
今の所有者は不動産は管理の煩わしく思っており、売却したいとのことです。
売主様のお気持ちをお察しいたします。ちなみに、・・・。
さらに質問を続けます。
現在の空室数は?
滞納者はいるか?
老人や生活保護者はいるか?
問題児はいるか?
告知事項はあるか?
その他、気にしておく点は?
約10分ほどでしょうか。
色々細かく聞いても不動産屋は丁寧に答えてくれる。
たくさん質問をしては迷惑ではないか?
いや、むしろその逆だろう。
質問をすればするほど、不動産屋からは『シンジさんは本気で考えている投資家だ』と認識される。中途半端な問い合わせだと、冷やかしだと思われる。
さらに質問をぶつける。
不動産会社との電話の続き
現在、検討や銀行審査などを始めている人はいますか?
最近まで審査していた人がいましたが、今ストップしています。
そうですか。
ちなみに、融資を出してくれそうな銀行をどこかご存じですか?
千葉銀行などは出せるようです。
属性にも拠りますが、この物件に対して千葉銀行は1,900万の融資が精一杯らしいです。
千葉銀行が1,900万の融資を出せるだと!?
結構、出せるんだな。
シンジさんは、自己資金はいくらお持ちですか?
諸費用も考えると自己資金700万くらい無ければ難しいと思います。
そのストップした人は、思ったよりも自己資金が必要になることで進めないのです。
なるほど…。
千葉銀行で2.000万円出せるなら、スルガ銀行やセゾンファンデックスでも可能だろう。
9割の2,300万円ほど融資を受けると、自己資金は500万円程度で済む。
一方、自己資金は〇〇〇万円ほどある。
それに、俺は千葉銀行に融資依頼するつもりはない。
俺の行っている築古中古アパート投資は、本当に良い物件を厳選している。
そのため、素早く審査を出すスルガ銀行やセゾンファンデックスの様な、金融機関でしか買えない。
千葉銀行やその他の地銀・信金・信組で借りようとすると、審査に1ヵ月ほどかかってしまう。その間に、他の投資家や現金客に先を越されてしまい売り切れてしまう。
良い物件はさっさと物件を購入してしまうことが重要だ。
スルガ銀行は金利が高いが、それは後で交渉して下げれば良い。
不動産会社との電話の続き
大丈夫です。手元資金は〇〇〇万円ほどあります。
それに、融資は私自身でスルガ銀行を手配します。
審査はおそらく大丈夫でしょう。
それは心強いですね。
よし、では最後の質問だ。
正直、指値はどのくらいまでは行けますか?
そうですね、まぁ、50万円ならば。
なるほど。
50万円は指値できそうなのか。
では、それ以上の指値を狙っていこうか。
分かりました。
検討してみます。
電話で質問した限り、この中古アパートに特に問題は無さそうだ。
利回りも立地も、なかなか良い条件だ。
このまま買う方向で進めよう。
さて次は、物件調査に行ってみよう。
カギは現地に置いてある様だ。
物件調査には、仲介業者の同行は必要ない。
一人で現地に行った方が、ゆっくりと物件を見ることができる。
物件の最寄駅は乗降者数2万人ほど。
駅前は、駅ビルなどの商業施設はない。
さすがにターミナル駅に比べるとかなり見劣りする。
ただ、思ったよりも意外と人は多い。
駅前のスーパーやコンビニや居酒屋など活気は感じる。
よく社会問題となっているが、閑散とした商店街なども無い。
想像よりも活気があるのは良い事だ。
どんよりとした田舎駅を想像していたが、実際は全く異なる。
物件までの道は平坦で、住宅やアパートが多い。
アパートの入居率も8~9割ほどで、賃貸経営は安定しそうだ。
また、近隣に畑などが無いのも高ポイント。
急にアパートが乱立して家賃相場が崩壊することはなさそうだ。
歩いているとすぐに物件に到着!
近い!
さすが徒歩7分!
物件にはすぐ着いた。
物件は、なかなか無機質な見た目だった。
物件自体は、可もなく不可もなくのフツメンだ。
イケメンとは思わないが、悪くはない。
特に良い印象に残る外観ではない。
だが、まだまだ十分働けそうだ。
物件の敷地を一周してみる。
少し怪しい人に見られるだろうか。
住民と目が合ったら挨拶すれば良い。
管理状態は良好。
ゴミは無い。
草もほとんど生えていない。
虫さんも住んでいなさそうだ。
とてもキレイな状態だ。
(第1号アパートとは大違いです)
鍵ボックスからカギを取り出して室内見学。
床はフローリングだが、押し入れは部屋の仕切りはふすまだ。
今は洋室だが、昔は和室だったのだろう。
キッチンも風呂も、完全に建設当時のままだ。
だが、全く問題ない。
中身はリフォームでなんとでもなるはずだ。
なんなら、間取りも少しは変更可能だ。
内装は、『大家がなんとかできる』のだ。
そもそも、現地調査の目的の8割は、
物件の周辺環境の確認だ。
周囲の環境はどうにも変えられない。
駅からの距離や、スーパーやコンビニの存在は、お店任せ。
周辺の環境は、『大家がどうしようもできない』部分なのだ。
今はグーグルストリートビューを見れば、
全国のほとんどの道沿いなら、ネットで現地を見ることができる。
周辺環境もなんとなくわかる。
だが、それでも分からないことがある。
それは、リアルタイムでの状況、
つまり、人の賑わい度合だ。
こればかりは、実際に足を運ばないと分からない。
自分の目でその街を見て、人が多いか少ないを感じなければ分からない。
栄えているか寂れているかの温度を、あなたの目で確認するのだ。
現地調査の一番重要なのは、
その町の温度を感じ取ることだと思う。
このアパートは、当初は駅の利用人数から少し躊躇した。
だが、実際に駅前を観察すると、そこそこの人がいた。
人の賑わいを、この目と体で感じることができた。
現地調査は合格。
ここまで来たら、不動産屋を訪問してみよう。
ネットが発達したとは言え、不動産を扱うのは生身の人間。
実際に会った方が踏み込んだ話ができるに決まっている。
特に不動産を扱うような年配の方には直接会うのが基本だ。
不動産屋の事務所に行くと、社長が出迎えてくれた。
さて、最後の交渉だ。
話の内容次第で100万円単位でお金が変わってくる。
話すメインテーマはもちろん指値の金額だ。
『いくらなら、売主に話をしてくれるか』を探り合おう。
おそらく、不動産屋は、売主が受け入れ可能な指値の額を知っている。
不動産屋と売主が販売価格を決める際、あらかじめ許容できる指値の額を申し合わせているはずだからだ。
あまりにも指値の幅が小さければ、売主に確認するまでも無くOKとなる。
ただ、これでは買主(私)はおもしろくない。
一方、指値の幅が大きすぎると、売主に相談するまでもなく断られる。
『安すぎる指値があった』など、売主の機嫌が悪くなる内容は伝えたがらないはず。
買主(私)としては、ちょうどその間を狙いたい。
仲介業者が売主に価格を確認する価格だ。
指値が現実的な範囲内ならば、不動産屋も早く売買成立させたいはず。
そのため、不動産屋が悩む価格を知ることが大切だ。
※指値の図
不動産屋が指値を渋る理由は、もう一つ理由が考えられる。
それは、売買の仲介手数料だ。
不動産の仲介手数料は、不動産屋にとっては大ボーナスだ。
100万円単位のお金が転がり込んでくるからだ。
特に、不動産屋が自ら売り手と買い手を繋げて売買成約させるとおいしい。
売主と買主の両方から、仲介手数料を受け取ることができるのだ。
売主か買主の片方が自社の客なら、売買金額の約3%。(片手)
だが、売主と買主の両方を自社の客なら、売買金額の3%の2倍になるのだ。(両手)
※両手と片手の図
仲介手数料は売買代金から計算される。
したがって、指値が入って価格が下がると不動産屋の儲けも減る。
今回の取引だと、不動産屋は両方から仲介手数料を得る。
だが、もし価格が100万円下がると、仲介手数料は6万円も下がってしまう。
普通は両手取引だと、仲介手数料の高さよりも成約を優先することが多い。
他社が買い手を見つけてくると、手数料が半分になってしまうからだ。
不動産屋の立場を考えながら、社長と話してみよう。
不動産会社との会話
お電話させていただきましたシンジです。
社長の△△です。
シンジさん、こんにちわ!
先ほど、現地を見てきました。
あの中古アパートの購入を前向きに考えてます。
ただ、価格を少し下げていただけないかと思っています。
もう少し安ければ安定経営できて、銀行の審査も通りやすいでしょう。
ぜひ、前向きに検討くださいませ。
ちなみに、どのくらいの指値が希望ですかい?
約2,400万円ほどが希望です。
約2,400万円以下ですか。
うーん。おそらく売主は拒絶するかもですね。
もし、仲介手数料が減ってしまうことが懸念であるなら、なんとかします。
購入後に内装工事代を高めで発注して、御社が儲かるようにすることも可能です。
ほう!詳しいですね!
我々業者の事情がわかっておられるなんて。
ただ、売主さんとは付き合いも長いので、裏取引で買主の肩を持つことはできません。
わかりました。
では、率直に聞きます。
いくらの指値であれば、売主にこの話を持って行ってもらえますか?
現実的な指値をしたいと考えてます。
そうですね・・・。
約2,400万円なら大丈夫だと思いますが。
わかりました。
2~3日以内に仮審査を取って、約2,400万円で買付証明書を出します。
仲介業者の承諾が得られないような指値は、売主業者に相手にされない。
指値をするなら、先に仲介業者と話をして『売主に相談してくれる額』を聞き出すべきだ。
仲介業者は、交渉の相手と思うべきではない。
心の中では、相談する味方という意識を持つべきだ。
その夜、仮審査書類と必要資料をスルガ銀行にメールで送付。
翌日の昼過ぎ、スルガ銀行から電話がかかってきた。
メールは送ったが、まだ電話では何も伝えてない。
おそらく、昨晩送った仮審査資料に不備でもあったかな。
そう思って電話に出た。
だが、担当者の言葉を聞いて、私は驚てしまった。
なんと、仮審査通過!
朝に担当者がメールを確認して、実質午前中の2時間ほどで仮審査を通したのだ。
さすが不動産投資に積極的な銀行だが、さすがに早すぎでしょう。
この早さに勝てる金融機関はまず無い。
審査の早さは、堂々の日本一だ。
仲介業者に約2,500万円で買付証明書を送付。
仲介業者の社長は、仮審査の速さに驚いていた。
さっそく売主に話をしてくれると言う。
あとは、俺は待つだけだ。
2,500万円なら、表面利回りは約14%となります。
利回り的にも満足です。
あとは売主の返事を待つのみだ!